こんにちは!作業療法士のノッポマンです。
脳梗塞や脳出血などのあと、「言葉がうまく出てこない」「相手の話が理解できない」といった症状に直面して、戸惑ってしまうご家族はとても多いです。これは「失語症(しつごしょう)」と呼ばれる症状です。
「どうして言葉が出なくなっちゃうの?」「お家ではどう接したらいい?」
そんな疑問や不安を解決するために、今回は失語症の原因となる脳の仕組みや、ご家族が今日からできる「お家での接し方のコツ」を、作業療法士の視点から分かりやすくお話しします!
1. 失語症ってどんな状態?
失語症は、喉や口の病気ではありません。また、物忘れ(認知症)とも違います。
頭の中にある**「言葉の引き出し」が、脳のダメージによってうまく開かなくなってしまった状態**なんです。
失語症になると、次の4つのことで迷子になってしまいます。
- 聴く:相手の話している言葉の意味が分からない
- 話す:言いたい言葉が出てこない、言い間違える
- 読む:文字や文章が読めない、意味が分からない
- 書く:自分の名前や伝えたい文字が書けない
2. 【専門知識】脳のどこが傷つくと失語症になるの?
人間の脳には、言葉をコントロールする「言語中枢(げんごちゅうすう)」という大切な場所があります。これは多くの人の場合、「左脳(左半球)」にあります。
この左脳の中にある、特に重要な2つのエリアがダメージを受けることで、失語症の症状が現れます。
① ブローカ野(や)= 言葉を「話す」工場
- 場所:脳の前の方(前頭葉)にあります。
- 役割:言葉を組み立てて、口や喉を動かして「話す」命令を出す工場です。
- ここが傷つくと(運動性失語):相手の話はなんとなく分かっているのに、自分から言葉を発しようとすると「う、うん…」とつっかえてしまい、スムーズに話せなくなります。
② ウェルニッケ野(や)= 言葉を「理解する」辞書
- 場所:脳の後ろ・耳の奥あたり(側頭葉)にあります。
- 役割:聞こえてきた言葉の意味を理解する「辞書」のような場所です。
- ここが傷つくと(感覚性失語):言葉はスラスラと滑らかに出てきます。一見すると元気そうに話しているように見えますが、実は言い間違いが多かったり、相手の質問と全く違うお返事をしてしまったりします。

3. ご家族必見!お家での接し方「5つの優しさルール」
失語症になったご本人は、「伝えたいのに伝わらない」と一番もどかしくて不安な気持ちでいっぱいです。ご家族のちょっとした工夫が、何よりのリハビリであり、心の安心につながりますよ!
① ゆっくり、短く、ハッキリと
一度にたくさんのことを話すと、脳の辞書(ウェルニッケ野)が追いつかなくなってしまいます。
- ❌「お父さん、もうすぐお昼ご飯だから、そこにあるお茶飲んで待っててね」
- ⭕️「お父さん、お茶どうぞ(お茶を差し出しながら)」
② 「はい」「いいえ」で答えられる質問に変える
「何が食べたい?」と聞かれると、言葉を探す工場(ブローカ野)が大忙しになってしまいます。
- ❌「お昼、何が食べたい?」
- ⭕️「うどん食べる?(はい/いいえ)」
③ 目で見える「ヒント」をたくさん使う
言葉(聴く・話す)が難しくても、目からの情報(視覚)は理解しやすいことが多いです。
- 笑顔でジェスチャーを交える
- 「お茶」「トイレ」などの文字やイラストが描かれたカードを使う
- 実物(お茶のコップなど)を見せながら話す
④ 言い間違いは、優しく「オウム返し」
「あ、りんごじゃなくてミカンでしょ!」と間違いをパシッと訂正されると、話すのが怖くなってしまいます。
ミカンを指して「りんご」と言ったら、**「あぁ、ミカンが食べたいのね」**と、ご家族が正しい言葉で優しく受け止めてあげてください。
⑤ 子ども扱いはNG!「大人のプライド」を大切に
分かりやすく話すことは大切ですが、赤ちゃん言葉や子どもっぽい態度の接し方は、ご本人の自尊心を傷つけてしまいます。
言葉は不自由になっても、これまでの人生経験や知性はそのままです。一人の大切な大人として、敬意を持って接しましょう。
4. 作業療法士(OT)から、ご家族へ伝えたいこと
病院での専門的なリハビリ(言語聴覚士さんとの練習)はもちろんとっても大切です。
作業療法士(OT)は言語そのものの訓練ではなく、「言葉の不自由さがあっても、その人らしく日常生活を送れるようにすること」を目的にアプローチします。
私たち作業療法士(OT)は、「お家での毎日の生活そのものが、最高のリハビリの舞台」だと考えています。
- 一緒にカレンダーを見て「今日は〇日だね」と確認する
- お料理のときに「お皿を1枚並べて」とお願いしてみる
- 好きな音楽を一緒に聴いてみる
こんな風に、生活の中で自然に脳を刺激していくことが、回復への大きな一歩になります。
焦らなくて大丈夫です。ご家族だけで抱え込まず、私たちリハビリスタッフをたくさん頼ってくださいね。一緒に笑顔のコミュニケーションを増やしていきましょう!


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