【肩関節】3つのポジション(1st・2nd・3rd)の制限因子と回旋筋の機能を徹底整理!

リハビリ

肩関節(肩甲上腕関節)の可動域制限(ROM制限)に対するアプローチで、絶対に欠かせないのが「3つのポジション(1st、2nd、3rd)」での評価です。

上腕骨の角度によって、緊張する関節包・靭帯(静的安定機構)や、伸張される筋肉(動的安定機構)はガラリと変わります。

今回は、臨床で迷わないために、各ポジションの定義、外旋・内旋時の詳細な制限因子、機能する筋肉(主動作筋)、さらにこれらを作業療法(ADL・生活動作)に活かす臨床ヒントを徹底解説します!


なぜ3つのポジションに分けて評価するのか?

肩関節の関節包や靭帯は、一箇所が硬くなるとすべての動きが制限されるわけではありません。骨頭のポインティング(角度)によって、どの組織がピンと突っ張るか(染み分け)が決まっています。

「1st外旋は行くのに、2nd外旋がいかない…」

このような臨床の謎を解き明かすカギが、各ポジションにおける制限因子の理解にあります。


第1ポジション(1st Position / 下垂位)

上腕を体幹に沿って自然に下ろした下垂位(外転0°)の状態です。骨頭が関節窩に対してやや下方に位置するため、関節の上部組織が主なターゲットになります。

骨頭の動きと制限因子

  • 【外旋時】前方・上部組織の緊張
    • 烏口上腕靭帯(CHL): 外旋時に最も緊張する最重要組織です。特にCHLの前部線維が硬くなると、1st外旋を著しく制限します。
    • 上関節上腕靭帯(SGHL): 関節包の上部を補強しており、CHLと共に緊張します。
    • 回旋筋腱板隙(カフスリット): 棘上筋と肩甲下筋の隙間が癒着・硬化すると、1st外旋の強固なブロックになります。
    • 肩甲下筋(上部線維): 筋肉の中では、肩甲下筋の上半分が引き伸ばされます。
  • 【内旋時】後方・上部組織の緊張
    • 関節包後上部: 骨頭が後方に押し出されるため、関節包の後ろ側かつ上の組織が緊張します。
    • 棘上筋 & 棘下筋(上部線維): 後方のローテーターカフの上部が伸張されてブレーキになります。

1stポジションで機能する筋(主動作筋)

  • 外旋: 棘下筋(上部線維)、小円筋
  • 内旋: 肩甲下筋(上部線維)、大胸筋、広背筋、大円筋

第2ポジション(2nd Position / 90°外転位)

肩関節を側方に90°外転させた状態です。投球動作(コッキング期)など、スポーツ現場や臨床で最も重要視されるポジションです。

90°外転すると、関節包の上下関係が逆転し、下方の組織(下関節上腕靭帯複合体:IGHLC)がハンモックのように骨頭を支えるため、ここが主たる制限因子になります。

骨頭の動きと制限因子

  • 【外旋時】前下部組織の緊張
    • 前下関節上腕靭帯(AIGHL): IGHLCの前方の膨らみです。2nd外旋時に骨頭が前方にズレるのを防が増すために、最も強く緊張します。
    • 肩甲下筋(下部線維): 外転に伴い、肩甲下筋の下半分(挙上時に骨頭を下方に引き下げる線維)が強く伸張されます。
    • 大胸筋・広背筋・大円筋: 脇を締めるグローバルマッスル(特に大胸筋)の短縮も、2nd外旋の物理的な制限になります。
  • 【内旋時】後下部組織の緊張
    • 後下関節上腕靭帯(PIGHL): IGHLCの後方の膨らみです。2nd内旋時に最も緊張します。野球の投球過多などでここが硬くなると、いわゆるGIRD(挙上内旋制限)の原因になります。
    • 棘下筋(下部線維) & 小円筋: 外旋筋群の下部線維が強く伸張されます。

2ndポジションで機能する筋(主動作筋)

  • 外旋: 棘下筋(下部線維が主軸)、小円筋
  • 内旋: 肩甲下筋(全般)、大胸筋、広背筋、大円筋

第3ポジション(3rd Position / 90°屈曲位)

肩関節を前方に90°屈曲させた(肘を前に出した)状態です。骨頭の回旋軸が変わり、関節包が立体的にねじれるように緊張します。

骨頭の動きと制限因子

  • 【外旋時】後方下部〜下部組織の緊張
    • 関節包の前下部〜下部: 屈曲により下方が引き伸ばされた状態でさらに回旋が入るため、下部関節包全般のタイトネスが影響します。
    • 大円筋・広背筋: 3rd外旋では、特に大円筋の伸張性が強く要求されます。
    • 肩甲下筋(下部線維): 2nd同様、下部線維が引き伸ばされます。
  • 【内旋時】後部組織(全般)の緊張
    • 関節包の後部(全般): 屈曲+内旋は骨頭を関節窩の後方に強く押し付ける動きになるため、後方関節包全体が突っ張ります。
    • 棘下筋(全般) & 小円筋: 肩甲骨の後ろに張り付いている外旋筋全体が、骨頭の後方移動に伴って強く伸張されます。

3rdポジションで機能する筋(主動作筋)

  • 外旋: 棘下筋、小円筋、三角筋後部線維
  • 内旋: 肩甲下筋、大胸筋、三角筋前部線維

【一目でわかる】制限因子・機能筋まとめ一覧表

ポジション状態外旋時の制限因子内旋時の制限因子外旋の主動作筋内旋の主動作筋
第1 (1st)下垂位烏口上腕靭帯(CHL)
肩甲下筋上部線維
関節包後上部
棘下筋上部線維
棘下筋(上部)
小円筋
肩甲下筋(上部)
大胸筋・広背筋
第2 (2nd)90°外転位前下関節上腕靭帯(AIGHL)
肩甲下筋下部線維
大胸筋
後下関節上腕靭帯(PIGHL)
棘下筋下部線維
小円筋
棘下筋(下部)
小円筋
肩甲下筋(全般)
大胸筋・広背筋
第3 (3rd)90°屈曲位関節包前下部〜下部
肩甲下筋下部線維
大円筋
関節包後部(全般)
棘下筋(全般)
棘下筋
小円筋
三角筋後部
肩甲下筋
大胸筋
三角筋前部

臨床に応用するヒント(作業療法士の眼)

作業療法(OT)の現場では、単に可動域の数値を追うだけでなく、「この回旋制限が、どの生活動作(ADL)を邪魔しているか」「どのような代償動作が出ているか」を分析し、アプローチや環境調整に繋げることが重要です。

OT視点のヒント①:1st・2nd・3rdと「ADL動作」の直結

それぞれの回旋制限は、ダイレクトに特定のADL困難さに結びつきます。

  • 1stポジションの制限 = 「身だしなみ・排泄動作」の制限
    • 1st外旋制限(CHL拘縮など): 食事(手掌を口に運ぶ)、洗顔、スマートフォンの操作が窮屈になります。
    • 1st内旋制限(関節包後上部短縮など): ズボンの上げ下ろし、下着の着脱、お尻を拭く動作(結帯動作の初期)が難しくなります。
  • 2ndポジションの制限 = 「更衣・洗髪動作」の制限
    • 2nd外旋制限(AIGHL拘縮など): 首の後ろでエプロンの紐を結ぶ、洗髪する(結髪動作)、上着の袖に腕を通す動きがブロックされます。
  • 3rdポジションの制限 = 「食事・机上作業」の制限
    • 3rd内旋・外旋制限(関節包後部、大円筋タイトネスなど): パソコン作業や調理時に、肘を机や台につけたまま手元を外・内に動かす動作(マウス操作や包丁の使用など)が制限され、肩甲骨の挙上による代償(肩がすくむ)を招きます。

OT視点のヒント②:代償動作の分析と「2次被害」の予防

特定のポジションで回旋が出ないとき、患者様は必ず「体幹の回旋・側屈」や「肩甲骨の異常運動」で代償します。

  • 例:2nd外旋制限(洗髪動作時)の代償
    肩関節で外旋が出ないため、頸椎を強く屈曲させ、体幹を側屈させて手を頭に近づけようとします。これが続くと、二次的に「首の痛み」や「腰痛」を引き起こします。
  • 臨床のヒント: 可動域を無理に広げるアプローチ(解剖学的治療)と並行して、動作分析から「どこに過剰な負担がかかっているか」を見極め、代償運動を減らすための動作指導(例:洗髪時は下を向くのではなく、肘を前に出して3rdポジションの動きに切り替えるなど)を提案します。

OT視点のヒント③:自助具・環境調整への展開

どうしても構造的な拘縮が強く、ROMの即時改善が難しい時期(慢性期や維持期、痛みが強い時期)には、ポジションの特性をふまえて環境を整えます。

  • 結帯動作(1st内旋)が困難で排泄後始末ができない:
    無理に後ろに手を回させず、長柄のトイレットペーパーホルダー(自助具)の導入や、温水洗浄便座のリモコン位置の調整を行います。
  • 結髪動作(2nd外旋)が困難で髪が洗えない:
    「長柄の洗髪ブラシ」を採用することで、肩を90°外転(2nd)させず、低い位置(下垂位に近い状態)のまま頭部にアプローチできるようになります。

まとめ

肩関節は「どこの角度で、どの組織が張っているか」を正確に評価することが、改善への最短ルートです。

PT的な運動学・解剖学的な視点に、OT的な「その制限が生活のどこで困るか」「どう代償しているか」という生活行動の視点を掛け合わせることで、患者様のADLは劇的に変化します。ぜひ明日からの評価やアプローチ、生活指導に役立ててください!


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