「寝たきりの家族のお尻が赤くなっているけれど、これって床ずれ?」
「車椅子に座る時間が長くなってきて、床ずれができないか心配…」
在宅でご家族を介護されている方の中で、このようなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
褥瘡(じょくそう=床ずれ)は、一度できてしまうと治るまでにとても時間がかかり、ご本人にとっても強い痛みを伴う辛いものです。しかし、床ずれは「除圧・栄養・スキンケア」の基本を押さえ、ちょっとした寝方や座り方の工夫をするだけで、未然に防ぐことができます。
今回は、体の動きや生活環境調整の専門家である作業療法士(OT)の視点から、明日から実践できる具体的な予防・改善策をわかりやすく解説します!
1. そもそも「床ずれ(褥瘡)」とは?初期サインを見逃さないで!
床ずれが起きるメカニズム
床ずれとは、寝返りや座り直しが自力でできない方の体が、ベッドや車椅子と長時間接触し続けることで発生します。体重によって皮膚やその下の組織が圧迫され、血流が滞って細胞が傷ついてしまう状態を言います。
【超重要】見逃してはいけない初期サイン
床ずれの初期サインは、骨が出っ張っている部分の「指で押しても消えない赤み」です。通常の赤みであれば、指で3秒ほど圧迫すると一時的に白く抜けますが、すでに組織が傷ついている場合は赤いまま変化しません。これを見つけたら、すぐに本格的な対策を始める必要があります。

床ずれができやすい場所(好発部位)
- 仰向けで寝ているとき:仙骨部(お尻の中央)、踵(かかと)、後頭部、肩甲骨
- 横向きで寝ているとき:大転子部(太ももの付け根の外側)、耳、くるぶし
- 車椅子に座っているとき:坐骨部(お尻の底の、座面に当たる骨)

2. ベッドの上でできる対策:床ずれを防ぐ「背抜き」の具体的手順
ベッドの背上げ(ギャッジアップ)をした後、衣服や皮膚が引っ張られて本人が苦しそうにしていたり、お尻がズレたりしていませんか?
ベッドが起き上がる際、体とマットレスの間に「ズレ力(摩擦とせん断力)」が働き、皮膚が強く引っ張られます。これは血管をねじ切る原因になり、非常に床ずれができやすくなります。

これを解消するのが「背抜き(圧抜き)」という技術です。お布団の中で、体にピタッと張り付いたパジャマをフワッと浮かせて空気を入れるようなイメージで行います。
【実践】背抜きの2つの方法
パターンA:ツルツルしたシートを使う(力がいらず、一番おすすめ!)
市販の「スライディングシート」や、家庭にある「大きめのゴミ袋(表面がツルツルしたもの)」を半分に切ったものを使用します。
- シートを背中に入れる:ベッドの背を上げる前に、本人の背中〜お尻の下にシートを敷いておきます。
- ベッドの背を上げる:目的の高さまでベッドを上げます。
- シートを引き抜く:シートの両端を持ち、左右に交互に優しく揺らすようにしながら、上方または横に引き抜きます。 これだけで衣服の突っ張りが「スルッ」と解消されます。

パターンB:手で行う方法(道具がない場合)
- 声をかける:本人に少しだけ頭や体を前に起こしてもらいます(難しい場合はそのままでOKです)。
- 手のひらを滑り込ませる:介護者は手のひらを「下(マットレス側)」に向けて、本人の肩口から背中、腰にかけて差し込みます。
- 隙間をなぞる:手のひらを、背中からお尻、太ももの裏にかけて、マットレスとの隙間をなぞるようにスーッと滑らせます。

⚠️ やってはいけないNG例
突っ張りを直そうとして、服の襟元を掴んで上にグイッと引っ張るのは厳禁です。高齢者の皮膚はティッシュペーパーのように薄いため、強い摩擦で皮膚がめくれてしまう(スキンティア)原因になります。
3. 車椅子での対策:作業療法士が教えるクッション選びと姿勢のコツ
車椅子に座っている時は、「坐骨(お尻の底の骨)」というごく狭い面積に体重のほとんどが集中するため、ベッド上以上に床ずれリスクが高まります。
① 状態に合わせて選ぶ!車椅子用クッションの3タイプ
車椅子の標準の布シートはハンモックのようにたるみやすく、床ずれ予防効果はありません。必ず専用のクッションを敷きましょう。
- ウレタン・フォームタイプ(軽度リスク〜標準):スポンジ素材。軽くて扱いやすく、姿勢を安定させやすいのが特徴。
- ジェル・ハイブリッドタイプ(中度リスク向け):流動性のあるジェルが、座ったときのお尻のズレや摩擦を吸収してくれます。
- エアータイプ(重度リスク向け / ロホクッションなど):空気の入った小さな部屋が並ぶクッション。圧散性は最強ですが、定期的な空気圧チェックが必要です。
💡 お得なプチ情報
これら専門的なクッションは購入すると数万円とお高めですが、要介護認定を受けていれば、ケアマネジャー経由で月々数百円(1割負担の場合)でレンタルできることが多いです。ぜひ相談してみてください。また、敷くときは「前後の向き」を間違えないように注意しましょう。
② 床ずれを防ぐ「座り方のコツ」
チェックすべきポイントは「3つの直角(90度)」です。
- 骨盤をしっかり起こす:お尻が前にズレた「ずっこけ座り」は仙骨の床ずれを直撃します。座る際は一度前にかがんでもらい、お尻を一番奥まで引き込んで骨盤を立てて座りましょう。
- 股関節・膝・足首を90度に:フットレスト(足乗せ台)の高さが適切で、足の裏がぴったり接地していると、お尻にかかる圧力が約10〜20%軽減します。
- 「仙骨(お尻)抜き」をする:車椅子に深く座った後も、脇の下から優しく支えてお尻を数ミリだけフワッと浮かせ、皮膚の突っ張り(ズレ力)を抜いてあげてください。

③ 在宅でできる!座っている時の「こまめな除圧」
車椅子に座っている時は、「30分に1回、数秒間」でもいいので、以下のようにお尻の圧を抜く時間を作って血流を再開させましょう。
- 自力でできる方は、肘掛けを押してお尻を浮かせる(プッシュアップ)。
- 介護者が声をかけ、お辞儀をするように体を前に深く倒してもらう(前方傾倒)。
4. 体の内側と外側からの基本ケア(スキンケアと栄養)
姿勢の調整だけでなく、皮膚そのものを強く保つアプローチも不可欠です。
- スキンケア(清潔と保湿):汗や尿による「蒸れ」は皮膚をふやけさせ、傷つきやすくします。こまめなオムツ交換や清拭を行い、保湿クリームや摩擦を防ぐ保護オイルを活用しましょう。
- 栄養管理(低栄養の防止):タンパク質、水分、亜鉛などが不足すると、皮膚の再生力が落ちて床ずれが悪化します。食が細い場合は、高栄養のゼリーやドリンクなどの栄養補助食品を取り入れるのも手です。
⚠️ 昔の常識は今の非常識!「マッサージ」はNG
昔は「赤くなったら血行を良くするために揉む」と言われることもありましたが、現在は「赤くなっている場所をマッサージすると、かえって皮膚の奥の組織を破壊するため厳禁」が医療・介護の常識です。絶対に揉まないようにしてください。
5. まとめ:家族だけで抱え込まず、チームで守ろう
床ずれの予防・改善には、毎日のちょっとした姿勢の工夫(背抜きや座り直し)と、適切な福祉用具の活用がとても大きな効果を発揮します。
なにより大切なのは、ご家族だけでがんばりすぎないことです。床ずれの兆候が見られたり、ポジショニングに迷ったりしたときは、主治医、訪問看護師、ケアマネジャー、そして私たち作業療法士(OT)や理学療法士(PT)などの専門家にいつでも頼ってください。
みんなでチームとなって、大切なご本人の心地よい生活と、負担の少ない介護環境を守っていきましょう!


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