「退院したばかりの親に、家でもリハビリを続けさせてあげたい」
「最近、足腰が弱ってきて自宅での生活が心配……」
そう思ったとき、選択肢に上がるのが訪問リハビリ(訪問リハ)です。しかし、いざ調べようとすると「介護保険」や「医療保険」といった言葉が出てきて、「うちはどちらを使えばいいの?」と悩んでしまうご家族はとても多いです。
この記事では、現役の作業療法士(OT)が、介護保険と医療保険の見分け方、かかる費用や時間の目安、利用開始までの具体的なステップをわかりやすく解説します。
🧭 1. うちの親はどっち?「介護保険」と「医療保険」の見分け方
訪問リハビリでは、「介護保険」を使うのが原則のルールとなっています。ただし、年齢や病気によっては「医療保険」の対象になるケースがあります。
まずは、以下の表でどちらに当てはまるかチェックしてみましょう。
| 保険の種類 | 対象になる方(目安) | 窓口(最初の相談先) |
|---|---|---|
| 介護保険 ※原則はこちら | ・65歳以上で、要介護・要支援の認定を受けている方 ・40〜64歳で、特定の病気(末期がんや関節リウマチなど)により認定を受けている方 | ケアマネジャー (または地域包括支援センター) |
| 医療保険 ※例外的なケース | ・要介護認定を受けていない方(40歳未満など) ・厚生労働大臣が定める特定の疾患(※)の方 ・症状が急激に悪化し、主治医から「特別訪問看護指示書」が出た期間 | 主治医 (または訪問看護ステーション) |
(※特定の疾患の例:末期がん、難病、進行性筋ジストロフィー、パーキンソン病関連疾患など)
💡 作業療法士のワンポイントアドバイス
「要介護認定を持っている人は、自動的に介護保険が優先される」と覚えておくとシンプルです。ただし、がんの末期や特定の難病などの場合は、要介護認定を持っていても医療保険に切り替わります。
🕒 2. 訪問リハビリの「時間」「回数」「費用」の目安
「1回にどれくらいやってくれるの?」「毎月の費用はいくら?」という疑問にお答えします。介護保険と医療保険で、ルールや料金が少し異なります。
⏳ 1回あたりの「時間」と「回数」
- 介護保険の場合
- 時間:1回あたり40分(20分×2コマ)が一般的です。ご本人の体力に合わせて60分に調整することもあります。
- 回数:週に1〜3回ほど、ケアプランに合わせて訪問します。(法律上、週に最大120分までと決められています)
- 医療保険の場合
- 時間:1回あたり30分〜60分が目安です。
- 回数:病気や状態によりますが、週に1〜3回(原則、週3回まで)利用できます。
※退院直後や症状が急激に悪化した場合など、主治医が特別に認めた期間は毎日訪問できる特別ルールもあります。
💰 1回あたりの「自己負担額」の目安(1割負担の場合)
※一般的な「自宅への訪問」かつ「1割負担」の料金目安です。お住まいの地域や、病院・ステーションの体制(加算)によって多少前後します。
| 保険の種類 | 1回あたりの自己負担額(目安) | 1ヶ月(週2回・月8回)の目安 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 約650円 〜 850円 (40分の場合) | 約5,200円 〜 6,800円 |
| 医療保険 | 約850円 〜 1,100円 (1回あたり) | 約7,000円 〜 9,000円 ※別途、月ごとの管理費等がかかります |
💡 作業療法士のワンポイントアドバイス
負担割合が「2割」または「3割」の方は、上記の金額がそれぞれ2倍、3倍になります。
また、医療保険の場合は「高額療養費制度」、介護保険の場合は「高額介護サービス費」という制度があり、万が一、毎月の負担が大きくなりすぎた場合は、上限を超えた分が後から戻ってくる仕組みになっているのでご安心ください。
📋 3. 【介護保険編】訪問リハビリを始める4つのステップ
介護保険を使って訪問リハビリを始める場合は、ケアマネジャー(介護支援専門員)が手続きのキーパーソンになります。
- ステップ1:ケアマネジャーに相談する
まずは担当のケアマネジャーに「自宅での生活(食事、着替え、トイレなど)で困っているから、訪問リハビリを検討したい」と伝えます。まだ介護保険を申請していない場合は、地域の「地域最高包括支援センター」に相談しましょう。 - ステップ2:主治医に「指示書」を書いてもらう
訪問リハビリを始めるには、主治医が発行する「訪問リハビリテーション指示書」が絶対に必要です。ケアマネジャーと連携して、病院に作成を依頼します。 - ステップ3:サービス担当者会議(面談)を行う
ケアマネジャー、訪問リハビリの専門職(作業療法士など)、ご本人、ご家族が集まり、自宅で面談を行います。「どんな生活を目指したいか(例:一人でお風呂に入れるようになりたい)」を話し合います。 - ステップ4:契約・リハビリ開始!
事業所と契約を結び、リハビリがスタートします。契約時には、介護保険証、負担割合証、印鑑などが必要になることが多いです。
🏥 4. 【医療保険編】訪問リハビリを始める3つのステップ
医療保険を使って訪問リハビリを行う場合、多くは「訪問看護ステーション」からリハビリ専門職(作業療法士など)が訪問する形になります。
- ステップ1:主治医や病院の相談員に相談する
医療保険の場合は、まず主治医、または通院・入院している病院の「地域連携室(ソーシャルワーカー)」に相談します。 - ステップ2:主治医から「訪問看護指示書」を発行してもらう
主治医がリハビリの必要性を認めると、訪問看護ステーション宛てに「訪問看護指示書(リハビリの指示を含む)」を発行してくれます。 - ステップ3:訪問看護ステーションと契約・リハビリ開始!
指示書を受け取った訪問看護ステーションと契約を交わし、リハビリがスタートします。
🛠 5. 作業療法士(OT)だからできる、暮らしに寄り添う訪問リハ
「リハビリって、筋トレや歩く練習ばかりで大変そう……」と思われるかもしれません。しかし、私たち作業療法士(OT)が提供するリハビリは、少し違います。
理学療法(PT)が「立つ、歩く」といった身体の土台を作るのに対し、作業療法(OT)は「その人が家でやりたい生活動作そのもの」を練習します。
- ご本人が大好きな「料理」をもう一度安全にできるように、実際のキッチンで練習する
- お気に入りの庭で「ガーデニング」ができるよう、しゃがむ・立ち上がる動作を工夫する
- ご家族の介護負担を減らすために、ベッドから車椅子へ上手に乗り移る方法をご家族と一緒に練習する
- 安全に暮らせるよう、手すりの位置や段差の解消法をアドバイスする
ただ身体を動かすだけでなく、ご本人の「やりたい!」という意欲を引き出し、ご家族も一緒に笑顔になれるような環境づくりをサポートするのが、作業療法士の仕事です。
❓ 6. ご家族が気になる「訪問リハビリ」のよくある質問(Q&A)
いざスタッフが自宅に来るとなると、気になる細かな疑問にお答えします。
Q. リハビリの時間は、家族がずっと同席していなければいけませんか?
A. 毎回ずっと付き添う必要はありません。
最初のご挨拶や、生活の困りごとの聞き取り、また「ご家族への介護指導(安全な介助方法など)」をお伝えする時間は同席をお願いすることがありますが、基本的にはスタッフにお任せいただいて大丈夫です。リハビリの間、ご家族は家事をされたり、ご自身の休息の時間に充てていただけます。
Q. 自宅の部屋が狭くて散らかっているのですが、片付けた方がいいですか?
A. そのままで全く問題ありません!
私たち作業療法士は「ありのままの生活空間」を見たいと考えています。普段の生活動線にある段差、家具の配置、散らかりやすさ(=動きにくさ)も含めて、どうすればご本人が安全に暮らせるかを考えるのが仕事です。どうぞお気遣いなく、いつもの状態でお迎えください。
Q. 訪問リハビリのスタッフにお茶やお菓子を出す必要はありますか?
A. お茶出しなどの心遣いは一切不要です。
すべての事業所で「お茶やお心付けの辞退」がルール化されています。次の訪問スケジュールも決まっているため、リハビリが終わったらすぐに失礼させていただくことがほとんどです。お気持ちだけありがたく頂戴いたします。
📌 まとめ
訪問リハビリを始めるための第一歩は、以下の通りです。
- 介護保険(要介護認定がある方) ➡️ まずはケアマネジャーへ相談!
- 医療保険(認定がない・特殊な病気の方) ➡️ まずは主治医・病院の相談窓口へ相談!
「うちの場合はどちらになるんだろう?」と迷ったときは、お近くの地域包括支援センターや、かかりつけの病院の窓口で「訪問リハビリについて聞きたい」と言っていただければ大丈夫です。
ご家族だけで抱え込まず、ぜひ専門職の力を頼ってくださいね。住み慣れた我が家での安心した暮らしを、全力でサポートします!


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