片麻痺の麻痺の段階は、主に「重度」「中等度」「軽度」の3段階(完全麻痺を含め4段階)に分けられます。運動機能の回復度合いを測る指標(ブルンストロームステージなど)を基準に、手足を動かせるか、日常動作にどの程度支障があるかで評価されます。
麻痺の段階と状態
1. 重度(完全麻痺を含む)
状態: 手足がほとんど、あるいは全く動かせない状態です(弛緩)。
症状: 関節を自力で動かせないため、筋肉が固まりやすく(拘縮)、ベッド上での生活や車いすでの生活が中心となることが多い段階です。
リハビリ: 拘縮の予防、残存機能の維持、関節の可動域訓練などを中心に行います。
2. 中等度
状態: 多少は動かせるものの、ぎこちなさや力の弱さが目立つ状態です。
症状: 腕を少し上げる、指を少し曲げるといった動作は可能ですが、日常生活において麻痺側の手足をスムーズに使いこなすことは困難です。
リハビリ: 基本的な動作の反復や、より実用的な手の動き(分離運動)を引き出す訓練に重点を置きます。
3. 軽度
状態: 日常生活動作(ADL)に大きな支障がないレベルまで回復している状態です。
症状: 健康な側に比べると多少のぎこちなさや動かしにくさは残りますが、手足を意図した通りに動かすことができます。
リハビリ: 日常生活や社会生活の中での実用性を高める訓練、筋力や巧緻性(器用さ)の向上を目指します。
次にレベル別に詳しい内容を記載します。
【重度】
自分で動かせない時期は「動かす準備」と「固まらせないこと」が最優先
脳梗塞や脳出血の直後など、麻痺側の手や腕が自分の意志でほとんど動かせない状態の時期です。筋肉がだらんと弛緩していることもあれば、逆にギュッと突っ張ってしまう(痙縮)こともあります。
この時期のリハビリの目的は、「将来、手が動き出すための準備」と「関節が固まる(拘縮)のを防ぐこと」です。
自分で動かせなくても、非麻痺側の手(良い方の手)を使ったり、ご家族に手伝ってもらったりすることで、自宅でも効果的なリハビリが可能です。
おすすめの自主トレーニングメニュー
① 両手組みの関節可動域運動(ボバース概念の応用)
良い方の手で、麻痺している方の手を下からすくい上げるようにして、指を交互に組みます(恋人繋ぎのような形です)。
そのまま、両手を一緒にゆっくりと胸の前から上へ、挙げられるところまで挙げていきます。

OTが教えるコツ!
麻痺側の親指が良い方の手の親指の上に来るように組むのがポイントです。こうすることで、麻痺側の親指が内側に巻き込まれるのを防ぎ、手のひらを開きやすくなります。
回数の目安:
朝・昼・晩に各10回ずつ、ゆっくり息を吐きながら行いましょう。
② 机の上でのバスタオル滑らせ運動
テーブルの上にバスタオルを敷き、その上に組んだ両手を乗せます。良い方の手の力を借りて、タオルを滑らせるようにして両手を前方や左右に大きく動かします。

OTが教えるコツ!
体が一緒に前に倒れてしまわないよう、背筋を伸ばして椅子に深く腰掛けた状態で行ってください。肩甲骨から腕全体が大きく動くのを意識しましょう。
この時期に用意したい!家にある物&おすすめグッズ
重度麻痺のリハビリでは、「正しい姿勢を保つこと」と「脳に手の存在を思い出させること」が大切です。そのために役立つアイテムをご紹介します。
【家にある物】バスタオル
丸めたバスタオルは最高の便利グッズです。椅子やソファに座っているとき、麻痺側の腕が下にだらんと垂れ下がっていませんか?
腕が重みで引っ張られると、肩が脱臼(亜脱臼)して強い痛みの原因になります。座っているときは、丸めたタオルを麻痺側の肘や手の下に敷いて、腕を少し高く保つようにしてください。

【Amazon・楽天で買える】おしぼりウェイト(または軽いアンクルウェイト)
動かない麻痺側の手は、脳がその存在を忘れてしまいがちです(半側空間無視や注意低下)。
手首に0.5kgほどの軽い重り(アンクルウェイト)を巻き、その手をテーブルの上に乗せておくだけで、リハビリになります。

ここがポイント!
重みの刺激が皮膚から脳へと伝わり、「ここに自分の手があるんだ」と脳が再認識しやすくなります(感覚入力)。リハビリの時間をわざわざ作らなくても、テレビを見ている時間に巻いておくだけでOKです!

【中等度】
「腕を大きく動かす」から「物を掴む・離す」へのステップアップ
「肩や肘は少し動くようになってきたけれど、指先が思うように開かない、物をうまく掴めない」という状態の時期です。
この時期のリハビリの目的は、「麻痺特有のギュッと握り込んでしまう力(共同運動)をコントロールすること」と「指を開いて物を掴む感覚を取り戻すこと」です。
つい一生懸命になりすぎて、肩が上がったり、体全体が傾いたりする「代償動作(おかしな癖)」が出やすい時期でもあるため、「楽に、正確に動かすこと」を意識しましょう。
おすすめの自主トレーニングメニュー
① お盆(トレイ)両手持ちバランス運動
家にあるお盆やトレイを両手で持ちます。お盆の上にピンポン球や丸めた紙くずなどを乗せ、落とさないように前後・左右にゆっくりと動かします。

OTが教えるコツ!
麻痺側の手が内側に巻き込まれたり、お盆から離れたりしないように、良い方の手でしっかりリードしながら、両手が「同じ高さ・同じ向き」になるよう鏡を見ながら行うとさらに効果的です。
② ペットボトル滑らせスタッキング(積み重ね)
机の上に水の入ったペットボトルを置き、麻痺側の手のひらをペットボトルの側面にピタッと当てます。そのまま、机の上を滑らせて奥へ押し出したり、手前に引き戻したりします。

OTが教えるコツ!
指がグーの形に握り込んでしまう場合は、無理に掴もうとせず、「手のひら全体で壁を押す」ようなイメージで動かすだけで、肘を伸ばす良いリハビリ(大胸筋や上腕三頭筋のコントロール)になります。
この時期に用意したい!家にある物&おすすめグッズ
中等度の時期は、「落としても壊れない物」を使って、失敗を恐れずに何度も練習できる環境を作ることが大切です。
【家にある物】500mlのペットボトル
中に入れる水の量を変えるだけで、簡単に重さを調節できる最強のリハビリ器具になります。
最初は水なし(空っぽ)から始め、軽々動かせるようになったら「半分(250g)」、最終的には「満タン(500g)」と、麻痺の回復度に合わせて段階的に負荷を変えてみてください。
【Amazon・楽天・100均で買える】プラスチック製のコップ(スタッキング用)
100均やAmazonで買える、重なりが良いプラスチック製のコップを5〜6個用意します。これを麻痺側の手で「掴んで、移動させて、重ねる」という練習を行います。

ここがポイント!
「掴む」ことよりも、実は「指を開いてコップを離す(リリース)」ことの方が難しく、脳にとって良いトレーニングになります。万が一落としてもプラスチック製なら割れないので、ご家族も安心して見守ることができます。

【軽度】
「指先でつまむ」「日常生活の動作」を目標にする実用リハビリ
「スプーンやコップは持てるようになったけれど、箸がうまく使えない、ボタンが留められない、爪切りが難しい」といった、指先の細かい動き(巧緻動作)に課題がある時期です。
この時期のリハビリの目的は、「親指と他の指を向かい合わせる動き(対立運動)」と「それぞれの指をバラバラに動かす独立運動」です。
実際の生活動作に直結する時期なので、少し頭を使いながら、ゲーム感覚で楽しく指先を動かしていきましょう。
おすすめの自主トレーニングメニュー
① 洗濯ばさみの「つまみ・移動」運動
100均などで売っている洗濯ばさみを数個用意します。麻痺側の指(親指・人差し指、親指・中指など組み合わせを変えて)で洗濯ばさみをつまんで開き、カゴのフチや段ボールの端に挟んでいきます。

OTが教えるコツ!
指先だけでなく、肩や肘が緊張して上がってしまわないよう注意してください。最初は軽い力で開く洗濯ばさみを選び、慣れてきたらバネの強いものに変えていくと、指先の筋力トレーニングにもなります。
② 小豆(またはビー玉)の皿移し
お皿を2つ用意し、片方に小豆やビー玉を入れます。それを麻痺側の指先で1つずつつまんで、もう片方のお皿へ移し替えます。

OTが教えるコツ!
指の腹でズリズリと引きずるのではなく、「指の先端(爪の近く)でしっかり挟んで持ち上げる」ことを意識してください。これが箸を持ったり、小銭を財布から出したりする動きの基礎になります。
この時期に用意したい!家にある物&おすすめグッズ
軽度の時期は、指先にしっかりと抵抗(負荷)をかけたり、目と手の連動を高めたりする専門グッズを取り入れると、改善のスピードがグッと上がります。
【家にある物】新聞紙やチラシ(紙ちぎり・丸め)
新聞紙を麻痺側の手だけで細かくちぎったり、手のひらの中でクシャクシャに丸めて小さな球を作ったりします。
指先を様々な方向に動かすため、手の中にある小さな筋肉(骨間筋や虫様筋)を鍛えるのに最適なお金のかからない方法です。

【Amazon・楽天で買える】リハビリ用粘土「セラパテ」
病院のリハビリ室でも必ずと言っていいほど使われている、医療用のシリコン粘土です。
普通の粘土と違って手につかず、ちぎる、丸める、引きちぎる、指で押しつぶすなど、これ1つで手指のあらゆるトレーニングが可能です。

ここがポイント!
セラパテは硬さによって色が分かれています。軽度麻痺の方の自主トレであれば、まずは「黄色(柔らかめ)」または「赤色(普通)」から始めるのがおすすめです。硬すぎると指を痛める原因になるので、迷ったら少し柔らかめを選びましょう。

【Amazon・楽天で買える】木製ペグボード(知育玩具でも代用可)
細い棒(ペグ)をつまんで、穴に差し込んでいく器具です。
「つまむ」「穴を狙って運ぶ」「差し込む」という一連の動作が、脳と手の連動を強力に促します。大人向けのリハビリ用だけでなく、可愛いデザインの子供用知育玩具(ペグさし)でも全く同じ効果が得られます。


まとめ
「自宅での自主リハビリは、毎日10分でも『継続すること』が何より大切です。まずは家にある物から始めてみて、物足りなくなったら専用のグッズを取り入れて、楽しみながら手指の機能を呼び覚ましていきましょう!」


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