【若手OT必見】「ただ聴くだけ」を卒業!リハ前のリスク管理に活かす肺聴診と副雑音の捉え方

リハビリ

若手作業療法士(OT)の皆さん、日々のバイタルチェックで「聴診器」をどのように活用していますか?「血圧測定の時しか使っていない」「一応胸に当てているけれど、実はよく分かっていない……」という方も少なくないのではないでしょうか。

急性期や回復期はもちろん、維持期・訪問リハの現場でも、患者さんの離床やADL(日常生活動作)訓練を進める上で呼吸器系のフィジカルアセスメントは必須のスキルです。特に肺の異常音(副雑音)をいち早くキャッチできれば、誤嚥性肺炎の早期発見や、その日のリハビリ負荷量の適切なコントロールに直結します。

今回は、若手OTが明日からの臨床で自信を持って実践できる「肺の聴診方法」と、知っておくべき「副雑音」の原因、そして「異常を聴き取った後にどう動くべきか」を分かりやすく解説します!


肺聴診の基本:若手OTが押さえるべき4つの実践テクニック

肺の音を正確に聞き取るためには、正しい手順と環境作りが重要です。なんとなく当てるのをやめ、次の4点を意識しましょう。

  1. 「座位」または「ギャッジアップ」で聴く
    • 可能であれば患者さんに座位(またはベッド上ギャッジアップ30度以上)をとってもらいます。背臥位(寝た状態)だと肺の広がりが制限され、特に分泌物(痰)が溜まりやすい「肺底野(肺の下部)」の音が埋もれてしまうためです。
  2. 衣服は必ずめくり、聴診器の「膜型」を直接肌に当てる
    • 肺音は高音域が多いため、聴診器は平らな「膜型(ダイアフラム)」を使用します。服の上からだと、衣服が擦れる音が異常音(クラックル)と非常によく似て聴こえるため、必ず直接皮膚に密着させます。
  3. 「左右対称」に比較しながら、上から下へ進める
    • 片側の肺を一気に聴くのではなく、「右上→左上」「左中→右中」「右下→左下」のように、左右の同じ高さを交互に比較しながら聴き進めます。これにより、片肺だけに起きている異常(肺炎や胸水、無気肺など)の左右差に気づきやすくなります。
  4. 「口呼吸」での深呼吸を誘導する
    • 患者さんには「口を軽く開けて、普段より少し大きく・ゆっくり深呼吸してください」と声をかけます。鼻呼吸だと鼻腔の狭窄音が混ざることがあるため、口呼吸が基本です。1箇所につき「吸って・吐いて」の1往復(1呼吸周期)をじっくり聴きます。
    • ※背部を聴くときは、患者さんに「自分の両肩を抱くポーズ(腕を組む)」をとってもらうと、肩甲骨が外側に開いて肺の音が綺麗に聴こえます。

臨床で出会う「副雑音(ラ音)」の種類・原因とOTの判断

肺の異常音は「副雑音(ラ音)」と呼ばれ、大きく4つに分類されます。それぞれの音が持つ意味と、リハビリ現場での判断基準を整理しましょう。

① 断続性ラ音(パチパチ、バリバリと途切れる音)

音と音の間に途切れがある、比較的短い音です。

細かい音(ファイン・クラックル)

  • 音の特徴: 「パチパチ」「髪の毛を指でこする音」
  • メカニズム: 潰れていた末梢の細気管支や肺胞が、吸気時にパッと開くときの振動音(主に吸気の終わりに聴こえる)。
  • 代表的疾患: 間質性肺炎、肺線維症、初期の心不全
  • OTの視点: リハビリによる低酸素血症(SpO2低下)を起こしやすい状態です。運動中の息切れやバイタル変動を注意深くモニタリングしてください。

粗い音(コース・クラックル)

  • 音の特徴: 「ブツブツ」「泡が弾けるような音」
  • メカニズム: 太い気道に分泌物(痰)が溜まっており、そこを空気が通過するときに弾ける音(吸気・呼気の両方で聴こえる)。
  • 代表的疾患: 肺炎、慢性気管支炎、排痰困難
  • OTの視点: 「痰が溜まっている」サインです!そのまま動くと息切れや疲労感が強まるため、リハビリの前にハフィングや姿勢排痰(側臥位など)を促し、クリアにしてからADL訓練に入ると効果的です。

② 連続性ラ音(ピーピー、グーグーと繋がって聴こえる音)

音が途切れず、一定時間持続して聴こえる音楽的な音です。

高い音(ウィーズ)

  • 音の特徴: 「ピーピー」「笛の音」
  • メカニズム: 細い気道が狭窄(狭くなる)し、空気が無理に通るときに発生する高音(主に呼気時に目立つ)。
  • 代表的疾患: 気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)
  • OTの視点: 気道が過敏になっています。離床や整容・入浴動作などの負荷によって誘発・増悪することがあるため、運動強度を落とす、あるいは休憩を多く挟む「エネルギー保存療法(省エネ動作指導)」への切り替えを検討します。

低い音(ロンカイ)

  • 音の特徴: 「グーグー」「いびきのような音」
  • メカニズム: 太い気道が狭窄している、または粘り気のある痰が絡んで空気の通り道が狭くなっている音。
  • 代表的疾患: 急性気管支炎、大中気管支の分泌物貯留
  • OTの視点: コース・クラックルと同様に排痰を促すアプローチが有効です。

一歩ハミ出す!異常を聴き取った若手OTの「次の一手」

「音が聴き取れた」だけで終わらせず、チーム医療に活かすアクションを起こしましょう。

  • 「カルテに書くとき」のコツ
    • 単に「肺音異常あり」ではなく、「どこで(部位)」「どんな音が(種類)」「いつ(呼吸周期)」「どうなったか(前後比較)」を明確に記載します。
    • 例:「左肺底部(背部)にて、吸気終末にファイン・クラックル聴取。リハ後の増悪なし。SpO2 96%で安定」
  • 「他職種(看護師や医師)へ報告するとき」のコツ
    • 異常を感じたら、リハビリを強行せずDr.やNs.に相談します。「いつもと違う音」を具体的に伝えることで、信頼されるOTになれます。
    • 例:「〇〇さんですが、本日右中肺野(前胸部)でコース・クラックルが低調に聴こえます。昨日までは無かった音で、少し微熱もあるようです。本日のリハビリはベッド上での軽い活動に留めてよろしいでしょうか?」

まとめ

肺の聴診は、目の前の患者さんの「今」の呼吸状態をリアルタイムに教えてくれる、いわばリスク管理のセンサーです。
血圧やSpO2の数値(客観的データ)にプラスして、自分の耳で聴いたフィジカルアセスメント(主観的・動的データ)が加わることで、リハビリの安全性は格段に高まります。

「よく分からないから聴かない」ではなく、まずは毎日多くの患者さんの「正常な肺音」を聴くことから始めてみてください。正常が分かれば、異常に必ず気づけるようになります。明日からの臨床で、ぜひ聴診器をポケットから取り出してみましょう!


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